アルバム『The Fame Monster』の収録曲
「Alejandro」は、Lady Gagaのアルバム『The Fame Monster』(2009年)に収録され、2010年4月20日にシングルとしてリリースされた楽曲。
ABBAやAce of Baseといったポップミュージックの要素を取り入れながら、ガガ独自のダークでドラマティックな世界観を作り上げている。ABBAの「Fernando」からインスピレーションを受けたとも言われている。
アレハンドロって誰?
この曲が描いているのは、特定の一人の男性についての物語というより、"恋愛そのもの"に対する恐怖や距離感だ。
愛することはできる。でも、深く関われば関わるほど、自分の人生やキャリアが壊れてしまうかもしれない——そんな不安や葛藤が、この曲全体に流れている。
歌詞に出てくるAlejandro / Fernando / Robertoという名前たちは、実在の誰かというより、情熱的で、強くて、惹かれてしまう「男性像」の象徴。だからこそガガは、「愛していない」と言っているわけではなく、"あなたのそばにはいられない"と何度も繰り返している。
三つの名前が象徴するもの
この曲を聴くときに知っておくと深まるポイントがいくつかある。
まず、タイトルでもある「Alejandro」という名前。これはスペイン語圏でよく使われる男性名で、情熱的でラテン系のイメージを持つ。Fernando、Robertoも同様に、異国的で魅力的な響きを持つ名前として選ばれている。これら三つの名前は、実在の誰かではなく、「情熱的で強い男性像」の象徴として機能している。
Don't call my name と I'm not your babe
サビで繰り返される核心的なフレーズがこれだ。
Don't call my name
「私の名前を呼ばないで」——これは単なる拒絶ではなく、「名前を呼ばれたら、もう引き返せなくなる」という切実な願い。名前には力がある。呼ばれた瞬間、関係性が変わってしまう。
もう一つ重要なのが、この防御線。
I'm not your babe, I'm not your babe
「あなたの恋人じゃない」と何度も繰り返す。これは冷たい拒絶というより、自分を守るために何度も自分に言い聞かせている言葉なのかもしれない。繰り返さなければならないほど、彼女は揺れている。
曲全体を通して、"愛したいけれど愛せない"という矛盾した感情が表現されている。これは、自分の人生やキャリアを守りたいという気持ちと、誰かを愛したいという気持ちの間で揺れる、多くの人が経験する葛藤でもある。
サビの中心「Don't call my name」
「Alejandro」で覚えておくと、この曲が何倍も楽しくなるフレーズを紹介する。
まず、サビの中心になるのがこのフレーズ。
Don't call my name, don't call my name
シンプルで覚えやすく、繰り返しが多いので、初めて聞く人でもすぐに口ずさめる。カラオケで歌う場合は、この部分を感情を込めて歌うと、曲全体に深みが出る。
三つの名前と「I'm not your babe」
そして、この曲の最大の特徴とも言えるのが、三つの名前を連続で呼ぶ部分。
Alejandro, Fernando, Roberto
このリズミカルな名前の繰り返しが、ダンサブルで印象的なフックになっている。発音は「アレハンドロ、フェルナンド、ロベルト」。スペイン語圏の名前なので、巻き舌を意識すると、より雰囲気が出る。カラオケで歌うときも、この部分が一番盛り上がるポイントだ。
もう一つ覚えておきたいのが、この繰り返し。
I'm not your babe
覚えやすくて口ずさみやすい。シンプルだからこそ、感情を乗せやすいフレーズでもある。英語学習者にとっても、"I'm not your ○○" という否定の表現を覚えるのに役立つフレーズだ。
公開と宗教的イメージャリー
この曲のミュージックビデオは、2010年6月に公開された。公開当時から大きな話題を呼んだ。
最も印象的なのは、宗教的なイメージャリーの使い方。修道女の衣装を着たガガや、ロザリオを使ったシーンなど、宗教的なモチーフが全編に散りばめられている。
監督のSteven Kleinは、これらの宗教的象徴について「否定的な意味ではなく、キャラクターの闇の力と魂の救済の戦いを表現している」と説明している(IMDb)。動画の最後でガガの口と目が消えるシーンは、「この世界の悪から感覚を引き上げ、祈りと瞑想へ内側に向かっている」ことを表しているという。
テーマの視覚表現
また、このMVは1920年代ベルリンのゲイシーン、ミュージカル「キャバレー」、反ファシズムなどからインスピレーションを受けている。ガガ自身のゲイフレンドへの賞賛と、当時アメリカ軍の"Don't ask, don't tell"政策(同性愛者の軍隊参加を制限する政策)への反対メッセージも込められていた。
黒と白を基調とした映像、軍服を着た男性ダンサーたち、そして宗教と欲望が交錯するビジュアル——これらすべてが、「愛したいけれど愛せない」という曲のテーマを視覚的に表現している。
この曲が今も聞かれ続けている理由
「Alejandro」は、恋愛への恐怖と距離感を表現した曲として、今も多くの人に共感され続けている。
この曲の核心は、「Don't call my name」——名前を呼ばれたら、もう引き返せなくなる、という切実な願い。愛したい気持ちと、自分の人生を守りたい気持ちの間で揺れる、多くの人が経験する葛藤を歌っている。
愛することの怖さ。自分の人生を守ることの大切さ。そして、それでも誰かを求めてしまう弱さ。
Netflixのドキュメンタリー「Gaga: Five Foot Two」では、キャリアが成功するほど恋愛がダメになっていく、と話すシーンが印象的。この映画のリンクを付け、その話題も付け足しておく。
大人になって、この曲に近づいた
この曲を初めて聞いたとき、正直あまりピンと来なかった。でも、歳を重ねて色んな人と出会い、色んな恋愛を経験してきた今、ガガが歌っていることが痛いほどわかる。
この曲は、恋愛経験を重ねた人なら誰もが一度は感じたことがある葛藤を歌っている。「この人を愛したら、自分の人生が変わってしまう」「でも、この気持ちは本物だ」——そんな矛盾した感情の間で揺れた経験がある人には、深く響く曲だと思う。
大人になって聞くと、また違って聞こえる。それがこの曲の良さだ。
「Alejandro」は、愛したい気持ちと、自分の人生を守りたい気持ちの間で揺れる、とても苦しい歌。だからこそ、この曲は強くて、美しくて、少し悲しい。