About この曲について
「The A Team」は、Ed Sheeranのデビューアルバム『+(Plus)』(2011年9月9日リリース)の先行シングルとして、2011年6月12日にリリースされた楽曲。Ed Sheeranにとって初めてのメジャーヒットとなり、全英シングルチャートで最高3位を記録した。
2012年には第54回グラミー賞で「Song of the Year」にノミネートされるなど、彼のキャリアを決定づける一曲となった。
曲タイトルで一瞬ひっかかるポイントがある。
「Aチーム」と聞いて、最初に思い浮かぶのは、映画やドラマの『特攻野郎Aチーム』——ヒーローたちの痛快なストーリー。
でも、Ed Sheeranの「The A Team」はまったく別物だ。
この"勘違いしやすさ"自体が、曲を聴く前の導入として機能している。派手さも、ヒーロー性も、チームとしての団結もない。描かれているのは、社会の底にいる一人の女性の物語。
Lyrics 歌詞のポイント
この曲を聴くときに知っておくと深まるポイントがいくつかある。
The A Team の本当の意味
この曲のタイトルは、「Class A drugs(A級ドラッグ)」が由来とされている。イギリスの薬物分類において、ヘロインやクラックコカインなど最も危険とされる物質を指す言葉だ。
Aチーム=選ばれた人たち、ではなく、抜け出すのが一番難しい場所にいる人たち。
そこにいるのは、華やかなチームではなく、静かに見過ごされていく一人の人間。この皮肉な言葉選びが、曲全体のトーンを支配している。
静かに描かれる現実
この曲の視点が、とにかく冷静だ。
感情を煽らない。同情も、正義感も押し付けない。ただ、目の前にある現実を淡々と歌う。
ギター1本で語られるメロディは、優しく聞こえるのに、歌詞の内容は重い。音楽が柔らかいからこそ、言葉の重さがより際立つ。
この曲は、「見ている」視点の歌だ。救おうとするのではなく、見過ごさずに歌にする——その距離感が、この曲の強さでもある。
エド・シーランが"近くに感じられる理由"
Ed Sheeranの歌には、説明しすぎない良さがある。
- 小さな描写だけで世界を見せる
- 正義感を押し付けない
- 路上で歌っていた頃の距離感が残っている
この曲も例外ではない。社会問題を語る歌なのに、説教臭くない。むしろ、一人の人間の姿を静かに見つめている。
Favorite Lines 口ずさみたいフレーズ
「The A Team」で覚えておくと、この曲が何倍も楽しくなるフレーズを紹介する。
まず、この曲の象徴的な部分。
And they say she's in the Class A Team
「彼女はAチームにいるって、みんな言う」——この一行で、タイトルの意味が浮かび上がる。シンプルだけど、深い意味を持つフレーズだ。
そして、この静かな描写。
Stuck in her daydream
「白日夢の中に閉じ込められている」——現実から逃れるための夢。でもその夢からも、抜け出せない。このフレーズが、彼女の状態を静かに語っている。
もう一つ覚えておきたいのが、この繰り返し。
We'll fade out tonight
「今夜、僕たちは消えていく」——"fade out"という言葉が、曲のフェードアウトと重なる。音楽のように、静かに、誰にも気づかれずに消えていく存在を表している。
Music Video MVの見どころ
「The A Team」のミュージックビデオは、Ed Sheeran自身が登場せず、一人の女性の物語を映像で描いている。
最も印象的なのは、その描き方の静けさ。派手な演出はなく、淡々と彼女の日常を映し出す。
路上で立つ姿、空虚な表情、一人で過ごす夜——そのすべてが、曲のメッセージと重なっている。MVは曲と同じように、説明しない。ただ、見せる。
この静かな映像が、曲の持つ重みをより深く伝えている。
他の曲との対比で見えるもの
Ed Sheeranには、「Thinking Out Loud」という永遠の愛を誓う曲がある。そして、「Happier」という、別れの痛みを静かに歌う曲がある。
その中で、「The A Team」は、恋愛とは違う種類の「距離」を歌っている。
- Thinking Out Loud:体温・近さ・愛
- Happier:距離・未練・理性
- The A Team:社会・孤独・現実
恋愛の始まりと終わりだけじゃない。人は、誰かと近づき、離れ、そして理解できない場所にいる人を見る。
Ed Sheeranは、距離を"感情"ではなく"状態"として歌っている。そのすべてが、彼の視点の広さを表している。
夜にひとりで聴くと刺さる理由
この曲は、夜にひとりで聴くと特に刺さる。
- 音数が少ない
- 声が近い
- ギター1本の淡々とした語り口
派手な曲じゃないのに、なぜか忘れられない。それは、この曲が「見過ごされがちなもの」に目を向けているからだ。
優しさは、救うことだけじゃない。見過ごさずに歌うことも、優しさなのかもしれない。
明るい曲じゃないのに、心に残り続ける。それがこの曲の力だ。