About この曲について

「Happier」は、Ed Sheeranの3枚目のスタジオアルバム『÷(Divide)』(2017年3月3日リリース)に収録された楽曲。アルバムの中でも特に感情的な一曲として、多くのリスナーの心に深く刺さっている。


「Happier」——この曲名がまず残酷だ。

"Happy"じゃない。"Happier"。「より幸せ」。

つまり、自分といた時より、別の誰かといる今の方が、あなたは幸せそうだ——そういうことだ。前向きな単語のはずなのに、胸に一番刺さるタイトルになっている。

この曲が描いているのは、別れた相手をまだ気にしている側の目線。「忘れていない」のに、「忘れたふり」をしている。会わなければよかった、見なければよかった、という後悔。


Lyrics 歌詞のポイント

この曲を聴くときに知っておくと深まるポイントがいくつかある。

静かに比較してしまう痛み

この曲の視点が、とにかくしんどい。

怒りも、泣き叫びもない。ただ、静かに比較してしまう。理性と本音がずっと並走している感じ。

Ain't nobody hurt you like I hurt you But ain't nobody love you like I do

「誰もあなたを僕ほど傷つけなかった。でも、誰もあなたを僕ほど愛さなかった」

この矛盾した感情。愛していたからこそ傷つけた。傷つけたからこそ別れた。でも、その愛は本物だった——そう言いたいのに、もう届かない。

"Happier"という言葉の残酷さ

サビで繰り返されるこのフレーズ。

I want you to be happier

「あなたにもっと幸せになってほしい」——優しい言葉だ。でも、その後に続くのはこれ。

I want you to be happier Even if that means you're happier without me

「たとえそれが、僕なしで幸せになることを意味していても」

これは祝福ではない。諦めだ。幸せになってほしいと思えるほど、まだ好きだった。でも、その幸せの中に自分はいない。そのことを受け入れようとしている——この静かな痛みが、曲全体に流れている。

会わなければよかった、という後悔

Then only for a minute I want to change my mind 'Cause this just don't feel right to me

「ほんの少しの間だけ、気持ちを変えたくなる。だって、これは正しいと感じられないから」

街で偶然会ってしまった。新しい相手と一緒にいるあなたを見てしまった。会わなければよかった。見なければよかった。でも、もう遅い。


Favorite Lines 口ずさみたいフレーズ

「Happier」で覚えておくと、この曲が何倍も楽しくなるフレーズを紹介する。

まず、この曲の最も象徴的な部分。

I want you to be happier

シンプルで覚えやすく、でも深い。カラオケで歌う場合は、この部分を感情を込めて歌うと、曲全体に深みが出る。

そして、この対比。

Ain't nobody hurt you like I hurt you But ain't nobody love you like I do

「誰もあなたを僕ほど傷つけなかった。でも、誰もあなたを僕ほど愛さなかった」——この矛盾した感情を、シンプルな言葉で表現している。英語学習者にとっても、"ain't nobody"(誰も〜ない)という否定表現を覚えるのに役立つフレーズだ。


Music Video MVの見どころ

「Happier」のミュージックビデオは、Ed Sheeran自身が登場せず、パペット(人形)によって物語が描かれている。

最も印象的なのは、この人形たちが演じる、別れた後の再会のシーン。元恋人が新しいパートナーと幸せそうにしているのを、遠くから見つめる主人公の人形——その表情が、切なさと諦めを静かに表現している。

監督のEmil Nawaが手がけたこのビデオは、カラフルで可愛らしい人形を使いながら、感情の痛みを丁寧に描いている。人間が演じるのではなく、人形だからこそ、感情の距離感がより際立っている。

曲のメッセージ——静かに、でも確実に傷ついている——が、このシンプルな映像によって、より深く伝わってくる。


Thinking Out Loud との対比で見えるもの

Ed Sheeranには、「Thinking Out Loud」という永遠の愛を誓う曲がある。そして、この「Happier」は、その真逆にある曲だ。

  • Thinking Out Loud:愛が"今ここ"にある
  • Happier:愛が"もう自分のものじゃない"

同じ恋愛でも、時間軸が真逆。この2曲を並べると、恋の始まりと終わりが見える。

Thinking Out Loud」で「70歳になっても愛し続ける」と誓った同じアーティストが、「Happier」では「あなたが僕なしで幸せなら、それでいい」と歌っている。

この対比が、Ed Sheeranという人の正直さを表している。相手を悪者にしない。自分を正当化しない。幸せを願うふりをしながら、ちゃんと傷ついている。この正直さが、エドの強さだ。


夜に聴くと刺さる理由

この曲は、夜に聴くと特に刺さる。

  • 音数が少ない
  • 声が近い
  • 一人の時間を強制される曲

寝る前に聴くと、過去を引き出される。忘れていたはずの誰かの顔、声、温度——そんな記憶と一緒に、この曲は心に残り続ける。

エロさではなく、心の痛さの歌。身体的な色気はほぼない。その分、感情の生々しさが強い。「まだ好き」が一切回収されないところが、つらい。

優しい曲なのに、全然優しくない。

「Happier」は、別れの後に一番聴いてはいけない曲かもしれない。